ハロー、バイバイ!
[なんか買ってくるもん、ある?]
美紗の妊娠を知ったヒカルは、そんなメールを毎夜帰宅する前にくれるようになった。
夜10時か11時には帰ってきて、美紗のリクエストした品物が入ったコンビニの袋を「はい」と差し出す。
脱衣所に溜まった衣類を
「適当に洗っとく」と言って洗濯してくれた。
家干しされた洗濯物の中に、自分のピンク色のパンティとブラジャーを見つけた美紗は、ヒカルの指がこれに触れたかと思うととても気恥ずかしかった。
でも、気にしないことにした。
今はとにかく横になって休みたかった。
「まるでヒカルがパパみたいだよね」
リビングのソファで美紗は横になったまま、ヒカルの方を見上げて言った。
ヒカルは、クッと唇を歪ませ笑う。
「ばーか。気持ちわりーこというなよ」
口は悪いけれど、眼差しは優しい。
こんな男に弱い女は多いだろう。
夕飯を外で済ませてきたヒカルは、風呂上りに冷蔵庫を開け、バドワイザーを取り出した。
美紗の買い物と一緒に買ってきたものだ。
何時の間にか、ヒカルの顎には髭がなくなり、濡れた髪はタオルで拭いた形のまま、つんつんと逆立っていた。
まるでヒカルが熱唱したあとの長身のロックシンガーのように見えた。