ハロー、バイバイ!
「体調、どう?」
バスタオルを肩にかけ、気怠げな様子でプルタブをぷしゅっと音を立てて開け、ヒカルは美紗に訊く。
「うん。今日も会社休んだし、大丈夫。悪阻も少し楽になってきたみたい。
みかん、ありがとう」
答えながら何気ない弟の仕草に、おもわず魅入ってしまう。
(ヒカルってば、今までの髪型の中で
一番、カッコいいかも…)
「美紗さあ」
「何?」
一口ビールを飲んだあと、ヒカルはソファの美紗のそばに立ち、缶ビールを手にしたまま、少し改まった声で言った。
「…もし、あいつが嫌だって言ったら、俺がなんとかするから。
俺がついていてやるからさ」
美紗を見降ろして、ヒカルは、ニッと笑った。
妊娠のことを誠には、まだ知らせていなかった。
「…ありがと」
美紗も、にっこり笑い返す。
ヒカルの気持ちは嬉しかったが、美紗は彼の未熟な若さを思い知ったーー亜美の手帳のプリクラを見た時と同じように。
(…こんな大変なこと、なんとかするなんて、簡単に言わないの)
美紗は目を閉じて、くすりと笑った。
ヒカルが自室に戻ったあと、美紗も怠い身体を起こし、不承不承シャワーを使う。