ハロー、バイバイ!


土曜の北風の吹く昼下がり。

誠に迎えに車で迎えにきてもらい、誠の家へ行った。


「昼ご飯、みかんしか食べないの?」


小さなテーブルに向かい合い、誠は眉をひそめ、心配そうな顔をする。


さっき、この部屋に入ってすぐ抱擁した時も、誠は美紗の痩せように驚いていた。


「悪い病気じゃないといいけどなあ…」




ーーこれは、病気なんかじゃない……

誠は、夢にも思わないんだろう。


「うん…」


この一週間、口に入れることが出来るのは、果物だけだった。


りんごやキウイは、包丁を使って皮を剥いたりするのが面倒で、バナナは甘ったるさがだめだった。

結局、ずっとみかんばかり食べていた。




今日、必ず誠に告げなければならない。





ーー俺がついているから。



ヒカルのその言葉が美紗を強くした。



誠の答えが、例え嫌な返事でも、冷静にそれを受け止めようと思った。


美紗は目を伏せたまま、勇気を奮い立たせる。



高いところから、飛び降りる気持ちで。



「…誠。私、赤ちゃん出来た」











< 78 / 87 >

この作品をシェア

pagetop