ハロー、バイバイ!
「黒木さん、お茶4つ淹れてくれる?
第二応接ね。ヨロシク!」
「あ、はい。分かりました!」
背後から設計課長ヨシダに声を掛けられ、美紗は、愛想の良い声で答えた。
(もう…今、急ぎの仕事やってるのに…)
しぶしぶCADから離れ、給湯室へ向かった。
お茶を淹れるのは、美紗の本来の業務内容に当てはまらない。
断っても差し支えないはずだったが、あのメタボ部長が
『美紗ちゃんが淹れてくれるお茶は
美味いんだよ~』
などと触れ回ってくれるせいで、美紗はすっかりお茶特命ポジションに置かれてしまっていた。
でも、まあ、いい。
美紗は別にキャリア志向で派遣になったわけでもなんでもない。
専門学校卒業後、前の会社でも、機械製図を描いていたが、業務不振、経営規模縮小の為、リストラの対象となってしまった。
その時のショックは、
今でも忘れられない。
他人事だと思って『まあ、女の人は結婚すれば、いいんだしね』と言ったあの鶏ガラみたいな人事部長を痛い目に合わせてやりたい!と本気で思った。
結婚の予定どころか、彼すらいなかったのに、美紗は、世間の荒波に放り出されてしまった。