ペテン死のオーケストラ
しかし、そこに立っていたのはサイネリア。
マルメロに緊張感が走ります。
サイネリアは落ち着いた様子でマルメロに話しかけてきました。

「実家に戻れるそうね。良かったわ」

全く心がこもっていないと分かります。

「ありがとう。サイネリア、急いでいるのよ。悪いけど、お話しはできないわ」

マルメロはサイネリアを睨みつけ言います。
しかし、サイネリアは無視をして話します。

「ねぇ、覚えてる?私たちは似ているって言ったこと。マルメロと私は似ているのよ、だから気持ちが分かるはずよ」

マルメロは鞄を床に置きます。
そして、サイネリアを睨みつけ言いました。

「もちろん。覚えているわ。特に、負けず嫌いな所はそっくりね」

「そうよ。マルメロと私は似過ぎているのよ。だから、お互い本音を言わなくても伝わるわ」

「サイネリアの本音…。そんなの、城に来る前から知っているわ。でも、私の本音をサイネリアは知らない」

「どうかしら?マルメロが思ってるよりもずっと、私はマルメロの事を知っているのよ。あまり、舐めない方が良いわ」

「あら、面白い。私に喧嘩を申し込みに来たのね。分かっているわよ。ただね、サイネリアのような、お嬢様じゃ私には勝てないわ」

「そうね。マルメロは、お嬢様じゃないから。私とは違う環境を知っているわ。でも、上流階級においては私が有利なのよ」

「やっぱり気づいていたんだ。私の素性に。馬鹿っぽいから分かってないのかと思ってたわ。ごめんなさいね」

「マルメロ、私に勝ったなんて思わないでね」

「お互い様にね」

二人は睨み合います。
すると、使いの者が現れ馬車が着いた事を知らせに来ました。
サイネリアはマルメロから目を離しません。
マルメロは、顎を少し上に向け傲慢な態度でサイネリアの横を通りすぎました。
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