ペテン死のオーケストラ
見慣れた懐かしい景色が見えてきました。

「私の町だわ」

マルメロは、懐かしさで胸がいっぱいになります。

大嫌いだった町、その町が今は優しく暖かく感じるのです。

町の人々は、立派な馬車を見て驚いています。

「変わらないわね」

マルメロは人々を窓からのぞき見ました。

町の人々は、馬車に乗っている人物がマルメロだとは分かりません。
立派な婦人が乗っていると思うだけ。

「家に着く頃には日が暮れるわ」

空はオレンジ色に変わっていました。

マルメロは、徐々に緊張感が増してきます。

「間に合って…」

マルメロの願いを乗せ、馬車は走ります。

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