ペテン死のオーケストラ
ハンノキはカッとなり、マルメロに怒鳴ります。

「ワシは王をよく知っている!あんな男に何ができるというのだ!権力だけで、能無しも能無し!!全く、役立たずだ!」

「大きな声を出さないで。お母様の側ですよ」

「知るか!この死はマルメロへの最後の逃げ道なのだ!!母上は死をもって、お前に知らせてくれたんだぞ!」

「お母様は、城に行くことに賛成していました。それに、喜んでくれていました。ハンノキ様、私を留めさせるための口実にお母様を使わないで下さい」

ハンノキは真顔です。
マルメロは、分かっていたのです。

母親の最後の言葉は違う、と。

答えも根拠もありません。
しかし、マルメロは確信していました。

最後の言葉なんか無かった、と。

これだけ苦しんだ表情で、最後まで正気を保っていられるとは思わなかったからです。

マルメロは言います。

「葬儀は明日にして下さい。三日後の朝には家を出なければいけません」

「マルメロ、もう良いだろう。可愛らしい遊びも、もう終わりにしよう」

「何をおっしゃってるのか分かりません。私は遊んでなんかいません」

「ワシには分かる。マルメロは、まだ子供だ。子供が大人のまね事をしている。いつか大火傷をするぞ」

「ハンノキ様は相変わらずですね。私は大人ですわ」

「マルメロは可愛らしい子供だ。はぁ、何故こんな事に…」

ハンノキはうなだれています。
マルメロは、ハンノキを無視して葬儀の準備に向かいました。
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