ペテン死のオーケストラ
しかし、ある事をきっかけに二人の関係に大きな亀裂が入ります。

マートルが妊娠したのです。

マートルは喜びます。
ジキタリスと結婚ができるからです。
マートルはすぐにジキタリスに報告しました。

「ジキタリス、聞いてほしい事があるの!とても幸せな事よ!」

「幸せな事?なんだ?」

「私のお腹にジキタリスとの子供がいるの!」

「はぁ!?」

ジキタリスは、明らかに嫌そうな顔をします。
マートルは予想外の反応に戸惑いました。
ジキタリスは喜んでくれると思っていたからです。

ジキタリスは面倒臭そうに言います。

「俺は知らない。お前、他の男との子供だろ?」

マートルはショックを受け言葉が出ません。
代わりに涙が溢れてきました。

「泣くなよ!俺には涙は通用しねぇ」

ジキタリスの態度はドンドンと酷くなっていきます。
マートルは、ジキタリスの豹変ぶりにもショックを受けています。

ジキタリスは頭を掻きむしりながら大きな溜息をつきました。

「くそっ!なんで、こんな事になるんだよ…」

マートルは固まったまま、ジキタリスの言葉を聞くことしかできません。

ジキタリスはマートルを睨みつけ悪魔の囁きのような恐ろしい言葉を言い放ちました。

「殺そう」

マートルは目を見開きます。
ジキタリスは、ゆっくりと立ち上がりマートルに近づいてきます。
その目は、悪魔の目。
鋭く冷たい目です。
マートルは、恐怖で体が動きません。
ジキタリスが手を伸ばしてきました。

マートルの腕を力強く掴みます。

その瞬間、マートルは叫びました。

「私が頑張る!ジキタリスには迷惑をかけないわ!!幸せにしてあげるから!」

咄嗟に出た言葉。
この状況を乗り切るための言葉です。

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