ペテン死のオーケストラ
マートルは立ち上がれずにいました。

お腹が痛いのです。

鈍い痛みがマートルを襲います。

「お願い…、死なないで」

マートルにとって最後の頼みの綱なのです。
お腹を大切そうに撫で、痛みと戦います。
じわりと汗が出て、呼吸が早くなります。

「駄目よ。気が遠のいてきた…」

マートルは俯せに倒れ込んでしまいます。

体に力が入らないのです。
息をするのが精一杯。

朦朧とする意識の中、ジキタリスを思います。

「助けて、ジキタリス…」

お腹の痛みに、意識が途切れ途切れになります。

視界がぼやけ徐々に世界が歪んで見えてきます。


ズキンっという鋭い痛みが走った瞬間、マートルは気を失ってしまいました。


「この子だけは幸せにする」


気を失う前に、マートルの頭に浮かんだ言葉。

マートルは意識がなくなりました。

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