ペテン死のオーケストラ
数日後、マートルの体力は戻り退院の日がやってきました。

「先生、ありがとう」

「ええ。体には気をつけるのですよ。あと、二週間に一度は診察に来て下さいね。元気な赤ちゃんを出産するためにね」

「わかったわ。じゃあ、またね」

マートルは清々しい気持ちで病院を後にします。

「赤ちゃんを産んでも良い」

マートルは、とても嬉しかったのです。
家族やジキタリスに反対された子供。
でも、産婆は励ましてくれました。
一人ではない、という気持ちになれたのです。
自分にも味方がいる、と。

しかし、現実は厳しいものでした。

小さな町なため、マートルの妊娠は瞬く間に町中に広まります。
13才の子供が、結婚もせずに妊娠した。
この話しは人々を驚かせ、尚且つ、厭らしい興味の目でマートルを見るようになります。

勤め先もクビになり、マートルはまた新たな職場を探し回らないといけなくなります。
町を歩けば悪口を言われます。

「はしたない女」

「親にも捨てられた馬鹿女」

「呪われた妊娠」

マートルの心は痛みます。
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