ペテン死のオーケストラ
ジキタリスは相変わらず、ダラダラと毎日を過ごしています。
段々と、ジキタリスに苛立ちを感じるようになってきたマートルは思わず言ってしまいました。

「男のくせに…」

この一言がジキタリスの逆鱗に触れてしまいます。
マートルを突き飛ばし怒鳴ります。

「お前が言ったんだろ!?何もしなくて良いって!嘘つきめ!もう一度言ってみろ。腹の子供を殺してやる!!」

マートルは必死で謝ります。
涙を流して頭を下げて。

そんなマートルを見てジキタリスは罵るのです。

「俺の人生を返せ。お前のせいで俺まで無茶苦茶だ」

マートルは悔しくても悲しくても我慢をして謝ります。
自分を守るためではありません。
マルメロを守るためです。

お腹の中のマルメロは、よく動くようになっていました。

生命を強く感じるのです。

「生きている」

マートルは、マルメロが動くたびに嬉しくて感動をするのです。

そんな我が子を守るために、ジキタリスに謝り続けます。

ジキタリスはマートルを罵るだけ罵ったら出ていきます。

ジキタリスが出ていった部屋は静かで、マートルはホッとするのです。


「マルメロ、ごめんね。大丈夫だった?」


マートルはお腹を撫でて語りかけます。
お腹の中のマートルは、動いて返事をしてくれます。
マートルは、嬉しくて涙を流すのです。

「ありがとう。幸せになろうね」

マルメロへ話しかけて、マートルは散らかった部屋の掃除をしました。

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