ペテン死のオーケストラ
取り残されたマートルは、動けません。
何が起こったのか理解できないのです。

ズキズキと痛みを感じ始め、やっと我に返ります。


「嘘でしょ?殴られたの?」


現実を受け入れた瞬間、恐怖が体中に走ります。
口の中が切れ、気持ちが悪くなってきます。


「マルメロは!?」


お腹を撫でて、マルメロを確認します。

しかし、ぴくりとも動きません。

青ざめていくマートル。

「駄目よ!死なないで!」

すぐに立ち上がり、病院へと走りました。


産婆はマートルを見て驚きます。

顔が赤く晴れ上がっていたからです。

「どうしたの!?」

産婆は慌ててマートルに近づきます。

マートルは息を切らしながら訴えました。

「マルメロが動かない!私のマルメロが!私の希望が!!」

取り乱しているマートルを、産婆は落ち着かせます。

「落ち着いて。すぐに診てあげますから」

「先生!私の希望なの!お願い!死なせないで!」

顔を真っ赤に腫らし、口からは血を流しているマートルをみて産婆は悲しくなります。

しかし同時に、母親としての強さも感じました。
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