ペテン死のオーケストラ
日記帳の空白のページをぱらぱらとめくります。

何もないと分かっているのに、マルメロは何かを探している様子です。

期待を込め、1枚、1枚、めくっていきます。


すると突然、プチ・ガーデンの中を強い風が吹き抜けました。


木の葉がザワザワと揺れ、泉の水も波打つほどの強い風。


日記帳もパラパラとページがめくれます。


一瞬の突風でした。


木も泉も、落ち着きを取り戻します。


マルメロは、ため息をつき日記帳に目をやります。


日記帳の空白のページを見たマルメロは目を見開き固まります。


『愛するマルメロ』


空白のページの隅っこに、弱々しく細い字で書かれた文字。


母親の字です。


インクが新しく、つい最近書かれた様子が伺えます。

マルメロは固まったまま、その文字を見つめています。

どれくらい経ったでしょう。

突然、空白のページに雨粒が落ちてきました。


ポタポタと、真っ白なページに雨粒が落ちるのにマルメロはページを閉じません。


空は快晴、雲一つありません。


なのに、日記帳には雨が降るのです。

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