ペテン死のオーケストラ
「聞いたわよ。お母様、駄目だったらしいわね」
サイネリアは明らかに苛立った様子でマルメロに言いました。
マルメロは、そんなサイネリアを見下し言います。
「駄目だった、だなんて下品な言葉ね。いつからサイネリアは汚い言葉を使うようになったのかしら?」
宿命のライバルとの会話が始まります。
「マルメロこそ、偉くなったものよね。最初、出会った頃は可愛らしい田舎娘だったのに。今じゃ、王の妾だもの。凄いわね」
「どうも、ありがとう。サイネリアも、最初に出会った頃はただの貴族の女だったのに、今じゃ立派な女性になられたこと。驚いちゃうわ」
「相変わらず、お世辞が下手ね。そこは直らないのね」
「お世辞なんか言ってないもの。全て本音よ」
「私たちって、本当に似た者同士だと思わない?マルメロのことが他人とは思えないのよ。全て、見通せるわ」
「確かに似た者同士よ。ただ、全て見通せるというのは言いすぎね。サイネリアは私のごく一部だけを見ているわ。それで全てだなんて笑っちゃうわね」
マルメロは片方の口角を上げ笑います。