ペテン死のオーケストラ
サイネリアが出ていった部屋で、マルメロは不安感に襲われます。

「お母様の死によって、私は弱くなったわ…。こんなんじゃ、1番になんかなれない」

マルメロは、大きく息を吸い込み落ち着こうと必死です。

「サイネリアは危険ね。注意が必要だわ」

マルメロの鋭い瞳が光ります。
サイネリアの力をマルメロが認めた瞬間です。
そして、サイネリアに勝たなければ自分の夢が叶わないと確信した瞬間でもあります。

マルメロは、部屋でジッとしている事に苦痛を感じたため、部屋を出ました。

城の者は、マルメロと出会っても挨拶をしません。
目を逸らし、無言で立ち去るのです。

「私の嫌われっぷりも凄いわね」

マルメロは苦笑いします。

城の人々に嫌われるくらいマルメロにとっては平気。
しかし、サイネリアに嫌われるのはマルメロにとって不利なのです。

王、城の人々、町の人々までサイネリアの評判は悪くありません。

そんなサイネリアに嫌われているとなれば、おのずと自分の首を絞めることになります。

マルメロは悩みます。

「サイネリア、何処までも邪魔ね」

思えば、出会ったその日からサイネリアはマルメロにとって邪魔な存在でした。

領土主の息子との結婚。

子供の出産。

王への近づき。

人々からの評判。

何をとっても、サイネリアに先を越されています。

「何か一つでも、サイネリアの先を越したい!」

マルメロは強く願います。
そして、必ず叶えると誓うのです。
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