ペテン死のオーケストラ
お気に入りのテラスに行くと先客がいました。

ストケシアです。

マルメロはストケシアの姿を見て安心します。

本当の自分で唯一、会話ができる相手だからです。

「ストケシア、何描いてるの?」

「あ、マルメロ様。いえ、風景を見ているだけで描いてはいません」

「相変わらず、ノンビリさんね。隣いいかしら?」

「はい、どうぞ」

マルメロはストケシアの隣に座ります。
そして、悩みをストケシアに話しだしました。

「ねぇ、ストケシア。私って何で嫌われるんだろう?」

あまりに唐突な質問にストケシアは声を失います。

「城の人、町の人、それにサイネリアにも嫌われてるわ。ストケシアも知ってるでしょう?私が悪口を言われてるって」

「はぁー…、まぁ…」

「最近じゃ、王にも素っ気なくされてるのよ。自分の評判を落としたくないんでしょうね。ねぇ、何で嫌われてるんだろう?」

「う〜ん…」

「サイネリアが恐いのよ。それに王も恐い。だって、サイネリアの犬なんだもん」

「マルメロ様、言い過ぎですよ!?」

「良いじゃない、別に。私たち二人だけの会話なんだし。はぁ、私どうしたら良いと思う?」

「マルメロ様はマルメロ様のままで良いです」

「それじゃ、嫌われるのよ。別に嫌われても良いけど、王とサイネリアには嫌われたくないの」

「嫌ってなんかいないですよ。王はマルメロ様を可愛がっていますし、サイネリア様もマルメロ様を親友だと言っていますよ」

「ストケシアは平和ね〜。そんなの体裁を守るためよ。本音は違うわよ。さっきだって、サイネリアが私に警告をしにきたんだから!」

「えぇ!?警告って何を!?」

ストケシアは驚き怖がります。
まさか、あの優しいサイネリアがそんな恐ろしい言葉を口にするとは思わなかったからです。
ストケシアの素直な反応に気を良くしたマルメロは面白がって話します。

「声が大きいわよ。さぁ、何かしらね。たぶん、王に絡んだ事じゃないかしら?」

「た、例えば…?」

少しの間、マルメロが口を開きます。

「私を殺すとか…」

ストケシアは目を見開きマルメロを見つめました。
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