ペテン死のオーケストラ
しかし、この状況を考えると冗談だとは思えなくなります。

一方のサイネリアは、王に付きっ切りです。

「サイネリアは素晴らしい」

「マルメロの友人とは思えない」

「サイネリアが可哀相だ」

人々は、サイネリアには優しく同情の言葉をかけるのです。

マルメロは、そんな言葉を馬鹿らしく思います。

「サイネリアの本性を知らないからよ」

マルメロは、サイネリアの本性を知っています。

自分と一緒で、とても負けず嫌い。

手段を選ばない相手だと、マルメロは思っていたのです。

「毎度、毎度…。上手い事やってくれるわね」

マルメロは、呟きました。


そんなマルメロをストケシアは心配します。

「マルメロ様、大丈夫ですか?不吉な噂を聞いたのですが…」

「大丈夫じゃないわよ。どう考えても、ピンチよ。殺されちゃうかもっ!」

「マルメロ様!止めて下さい!真剣に話して下さい!」

「真剣よ。大ピンチだもん。サイネリアが、どう動くかよね」

「サイネリア様が絡んでいるのですか?」

「女の勘よ。サイネリアは必ず絡んでいるわ。だからといって証拠もないし。はっきり言って、私は不利な状況よ。何とかしないと、本当に殺されちゃうかも」

「マルメロ様、そんな考えは止めて下さい。だって、マルメロ様は何もしてない!」

「何もしてなくても、嫌われてるだけで悪なのよ。そういうモノなのよ」

「止めて下さい!止めて下さい!」

ストケシアは、顔を真っ赤にして目を潤ませ必死の形相でマルメロに言います。

マルメロは、そんなストケシアを見て少し安心するのです。

「私にも、まだ味方はいる」

ストケシアはマルメロにとって、とても心強い友人でした。
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