ペテン死のオーケストラ
会場内に入ったマルメロは驚きました。

見たこともない、華やかさ、豪華さ、香り、です。

金色と白色がまぶしくて目が開けられないほど輝いています。
色とりどりの衣装を纏った男達に女達。
様々な種類の料理に飲み物。

マルメロは口をあけたまま、固まってしまいました。
しかし、すぐに気を引き締め中へと進んでいきました。

貴族達は気軽に挨拶をしてきます。

「ご機嫌よう」

「お久しぶりですね」

「今日も、お美しいこと」

会った事もないマルメロに、失礼にならないよう貴族は知ったかぶりをします。

マルメロも、適当に返事をしながら思いました。

「貴族も外見だけね。中身がまるでないわ!余裕、余裕!」

笑いが込み上げてきますが、すました表情を崩さないよう注意します。

「どれが、息子かしら?」

マルメロは目で探しました。

しかし、どの顔も同じに見えてしまい全く分かりません。

「1番重要なのに!!」

マルメロは焦ります。

すると、隣にいた女性が話しかけてきました。

「この舞踏会の、本当の意味をご存知?」

マルメロはハッとして答えます。

「ええ。噂、程度ですけど。ご存知ですの?」

「勿論。ほら、あそこにいらっしゃる男性。あの方の婚約者を選ぶための舞踏会ですのよ」

マルメロは言われた方向を見ました。

細くて、白くて、小さくて…、いかにも弱そうな男性が笑っていました。

マルメロは内心、「嫌だわ」と、思いました。

すると、女性が少し笑いながら言います。

「こんな舞踏会を開かないとお嫁様を見つけられない男性ですもの。ふふ、無理もないわね」

マルメロは、この女性が気に入りました。
とても、楽しい話し方をするからです。
それに、マルメロ好みの気が強そうな女性です。

マルメロは言いました。

「私はマルメロと言います。失礼ですが、お名前は?」

女性は、急に笑い出しました。
< 26 / 205 >

この作品をシェア

pagetop