ペテン死のオーケストラ
サイネリアはマルメロに言います。

「手紙を出すわ。マルメロと出会えてよかった!私は、そろそろ帰るわね。顔だけ出しておけば親は何も言わないし」

マルメロは少し寂しい気もしましたが、自分にも目的があるため笑顔で答えました。

「ええ。私も手紙を書くわ。サイネリアも、絶対に手紙ちょうだいね」

二人が握手をして、別れようとした時「すみません」と、男性の声がしました。

マルメロは声の主を見て驚きます。

なんと、領主の息子だったからです。

マルメロは冷静さを装いつつ息子を見ました。

領主の息子は言います。

「私は、アザレアと言います。もし、よろしければ、少しお話しませんか?」

マルメロは、目が輝きました。

「さすがは私ね!やっぱり特別なのよ」

マルメロは勝ち誇った笑みを浮かべます。

しかし、マルメロの思惑とは違いアザレアはサイネリアに話しかけ始めたのです。

「一目みて、貴女が気になりました。話しがしたいです。いかがですか?」

マルメロは驚いてしまいました。
まさか、サイネリアに対してだとは思わなかったからです。
しかし、分かった瞬間に怒りが込み上げてきました。

サイネリアは、軽くあしらい断っています。
アザレアは、しつこくサイネリアを誘っています。

隣で、ほったらかしのマルメロは「こんな屈辱感は初めてよ!」と、怒りと嫉妬で爆発しそうです。

マルメロは冷静さを保ちつつ、サイネリアに言いました。

「サイネリア、少しくらい付き合ってあげなさいよ」

マルメロは、サイネリアがアザレアを嫌がっている事を知りつつ意地悪を言いました。

サイネリアは困った顔で答えます。

「でも…。私は帰るから…」

マルメロは、更に苛立ちました。
「お嬢様はこれだから!」マルメロは思いながらも、言います。

「どっちなの?はっきりしなさいよ」

サイネリアは困り果て答えました。

「少し…、少しくらいなら…」

マルメロは頭に血がのぼるのが分かりました。
しかし、必死に自分を抑えます。

アザレアは喜び、サイネリアは肩を落としています。

しかも、アザレアはマルメロに言いました。

「ありがとう。貴女のおかげだ」

この言葉にマルメロはアザレアを睨みつけ言いました。

「馴れ馴れしく話しかけないで」

マルメロの迫力に、一瞬にしてアザレアの顔が青ざめました。

サイネリアは肩を落としたまま。

マルメロは、勢いよく振り向き会場を後にしました。
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