ペテン死のオーケストラ
「あのマルメロが貴族入りしたぞ!」
「まんまるマルメロが…。信じられない」
「でも、相手はハンノキだ」
「でも、金持ちだ…」
「羨ましい!!!」
人々が口々にマルメロを羨ましがります。
同時に、嫉妬をあらわにしています。
マルメロと母親が住んでいた家は、町の人々によってすぐに壊されました。
それほど、羨ましく悔しかったのです。
マルメロは母親と一緒に、ハンノキの家に住んでいます。
婚姻は、マルメロが16才になってからと決まりました。
母親は「いつ死んでも良い!最高に幸せだわ」と、毎日を過ごしています。
ハンノキも「最高に幸せだ!気に入った女を手に入れたのだからな」と、毎日を過ごしています。
しかし、マルメロは違いました。
貴族としての作法を熱心に勉強しています。
毎日、勉強を必死にしています。
そんなマルメロをみて、ハンノキは更に嬉しくなるのです。
「そんな勉強しなくて良いぞ!マルメロは、そのままで十分なのだからな」
ハンノキは、マルメロに言います。
マルメロは冷たく答えます。
「いえ、全く駄目です。私には足りないものが多過ぎですもの。16才になるまでに完璧な女性になってみせますわ」
ハンノキは呑気にも、そんなマルメロが可愛くて仕方ないと考えていました。
しかし、マルメロは自分の野望のために勉強をしているのです。
更に上へいくために。
「私は、こんな所で終わる女じゃない」
マルメロの瞳は鋭く、そして強く遠い未来を見据えていました。
「世界中に、マルメロという存在を認めさせてやるわ」
マルメロの夢、そして未来。
彼女の第一幕が静かに上がりました。