ペテン死のオーケストラ
マルメロは、サイネリアとの再会に妙な喜びを感じていたのです。

それは純粋な喜びではなく、以前に受けた屈辱を仕返すチャンスがきたという喜び。

「サイネリアに、ちゃんとお返しをしないとね…」

マルメロは怪しく微笑みました。

そして、まだ笑っているハンノキを睨みつけ言いました。

「どうせなら、サイネリアを驚かせてさしあげたいわ。ハンノキ様、特別にペンダントを作って下さらない？」

「お、何だ？ペンダントなんて安いもの！なんなら、宝石でも散りばめるか？」

「いいえ。金だけの質素な物で。サイネリアの頭文字を、かたどって差し上げて下さい」

「構わんが、そんな物で良いのか？」

「はい。必ず、金だけで作ってくださいね。サイネリアに友愛の証として贈りますの」

「女は分からんな！仲が良くもないくせに、わざわざ近づかんでも良いものを！」

「ハンノキ様は勘違いされてるわ。私は、サイネリアと仲が良いのですよ。ただ、色々あって…。ですから、謝罪の気持ちも込めてペンダントを贈りたいのです」

「そうだったのか！よし、わかった！すぐに作らせよう！」

鋭くも単純なハンノキは、さっさと部屋から出ていきました。
マルメロも立ち上がり、部屋を出ます。

「一気に叩くのは楽しくないわ。じわじわとやらないとね」

マルメロは腹の底から込み上げてくる笑いを抑えます。
この感覚も久々で、マルメロは更に楽しい気分になるのです。

自分の力を見せつけるのに、ちょうど良い相手を見つけたとマルメロは思いました。
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