ペテン死のオーケストラ
大好きなプチ・ガーデンに着いたマルメロは安らぎの時間を過ごしていました。

初めて来た時よりも、緑が濃くなり木は力強くなっています。
泉の水が流れる音を聞いていると心が落ち着いていくのです。

「ここは、私だけの場所」

マルメロは、お気に入りの石の上に座りボーッと泉から湧き出る水を見ていました。
太陽の光があたり、キラキラと光って見えます。
ここだけは、別世界のようでマルメロは素の自分に戻れるのです。

「私って苛立ちやすいのよね。ここにいる時は、全く大丈夫なのに…」

暖かい風が草花を揺らします。
その音もマルメロを癒してくれます。

「私は、ただ皆に認めてほしいだけよ。なのに誰一人として私の本質を見抜いてくれないの」

空を見上げマルメロは空気を吸い込みました。
生暖かい緑の香りが美味しくて、マルメロは眠たくなってきました。

「私のプチ・ガーデン。あなただけが友達よ」

泉がコポッと、まるで返事をしたように音がしました。
マルメロは思わず笑ってしまいました。

「サイネリアだって、悪い人じゃないのよ。でも、私は騙されやすいの」

段々とマルメロの本音が出てきます。
マルメロは元々は、とても優しい女の子でした。
いじめられ、嫌がらせを受け、今のマルメロが出来上がったのです。

プチ・ガーデンにいる時だけは、素直なマルメロになれますしマルメロ自身も素直な自分を出すようにしていました。

そうやって、上手く自分をコントロールしていたのです。

「でも、サイネリアの子供には会いたくないの…。まだ、会いたくない」

また、泉がコポッと返事をしてくれました。
マルメロは少し自信が出ました。

「そうよね。無理をしなくて良いのよね。きっと、自然と会える時がくるわよ」

マルメロは、落ち着きを取り戻しプチ・ガーデンに「また、来るわね」と言うと帰っていきました。

プチ・ガーデンから一歩外に出ると気の強いマルメロに戻ります。

マルメロは無意識に自分を守っているのです。
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