ペテン死のオーケストラ
『大親友のマルメロへ
マルメロ、変わりはない?
私は毎日、毎日、子育てにおわれているわ。
とても可愛らしい子よ。
でも、とても手のかかる子なの。
一人の時間なんて取れないわ。
ごめんなさい、愚痴ばかり書いちゃったわ。
少し疲れがたまってるのかもね。
マルメロと話しがしたい。
時間が取れたら会いに来てね。
マルメロに息子も見てほしいの。
待っているわ。
サイネリア』
サイネリアからの手紙を、澄ました顔でマルメロは読んでいました。
サイネリアから招待を何度も受けているのですが、マルメロは色々な理由をつけて断り続けています。
「鈍感な女ね。私が拒否をしていると何故分からないのかしら」
マルメロは呆れた表情で、サイネリアからの手紙を破り捨てました。
「サイネリアと関わると、面倒な事ばかりよ。代償として、サイネリアには何とか役に立ってもらわないとね」
マルメロは、すっかり元の気の強いマルメロに戻っていました。
子供が欲しいという想いも無くなっています。
マルメロは「更に上に行くには子供は邪魔」と結論付けたのです。
「何かきっかけが欲しいわ。そのためには、やっぱりサイネリアが必要よね。彼女の実家の力だけは認めてあげてるのよ」
マルメロがサイネリアと関わり続ける理由は、サイネリアの家柄にあります。
サイネリアの実家は、長い歴史があり王族との関わりもあるのです。
マルメロにとって、それは魅力に溢れた話し。
「王族と関わりがあるだなんて魅力的だわ。この繋がりを利用しないだなんて信じられない。サイネリアには働いてもらわないとね」
マルメロは意を決して、サイネリアへ手紙を書きました。
『大親友サイネリアへ
私は変わりないわ。
サイネリアは、毎日大変みたいね。
私もサイネリアと話しがしたいわ。
やっと時間が取れそうなのよ。
だから、サイネリアの家にお邪魔させてもらえそうよ!
近々、そちらに伺うわ。
マルメロ』
マルメロは、手紙を書き終え笑いました。
「私って、性格が悪いわね」
マルメロは、自分が嘘つきだと笑ったのです。
しかし、嘘つきでも何でも自分の夢を叶えるためなら何でもすると誓ったマルメロは余裕の表情です。
「必ず、夢を叶えてやるわ」
マルメロは、サイネリアとの再会に気合いをいれました。