ペテン死のオーケストラ
そんな辛い環境の中、マルメロは育っていきます。

「マルメロって、でっかいよね」

「マルメロは、馬鹿でいいよね」

「マルメロの笑い方おかしいよ」

マルメロには、悪口が日常会話のように聞こえます。

マルメロが何か言うと必ず、からかわれ馬鹿にされます。

マルメロと同じ事を違う人が言っても、馬鹿にされないのに。

優しい人達はマルメロを庇ってくれます。

「あんなの無視しときな」

「嫌な奴だね!気にしちゃ駄目だよ」

「マルメロは優しいのに、ひどいよね」

マルメロを慰めようと言葉をかけてくれるのです。

マルメロは嬉しい反面、情けない気持ちになります。
自分が悪口通りの人間だ、と言われているように感じるからです。

マルメロが欲しかったのは慰めでも励ましでもなく、悪口を言われている自分への否定だったのです。

「私は、悪口通りの人間じゃない」

マルメロは、皆にそれを知ってもらいたいと思っていました。

しかし、周りの人達はマルメロの願いとは違います。

悪口を言って馬鹿にする人か悪口を言っている人を否定する人、そのどちらかでした。

マルメロは自分で答えを見つけ出すしかなかったのです。
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