ペテン死のオーケストラ
『大親友サイネリアへ

ハンノキからの許しが出たわ。

少し無理強いをしちゃったけど、私達の楽しみのためには仕方ない事よね。

早く、舞踏会に行きたいわ。

楽しい事を待つ時間って長く感じるのよね。
そして、すぐに終わっちゃうのよ。

だからこそ、思いっきり楽しみましょうね。

マルメロ』


マルメロは、サイネリアに手紙を送りました。

舞踏会に着て行くドレスや靴、それに髪型も考えます。

「何が何でも、王の心を射止めないと。ハンノキが言うには、女癖が悪いみたいだから余裕かもね」

マルメロは舞踏会が楽しみで仕方ありません。
しかし、気掛かりな事もあります。

「サイネリア…。また、サイネリアに横取りされたりしないわよね」

昔の嫌な記憶が頭を過ぎります。
しかし、あの時とは違うことがあります。
サイネリアは結婚し子供までいるのです。
特に子供がいるのはマルメロにとって有利です。

「妾は、子供のいない女から選ばれるはずよ」

マルメロは弱気になっている自分に気合いをいれました。

「気持ちで負けたら駄目。私は美しいのだから!」

マルメロは鏡に映る自分を見て、にんまりと笑いました。


『大親友のマルメロへ

お許しが出たのね!良かったわ。

王の誕生会への出席は、連絡しておいたわよ。

友達も連れていくって伝えたら、大歓迎ですって。

とても楽しみになってきたの。

クンシランの事は、少し心配だけど主人がいるのだから気にしないようにするわ。

せっかくの気晴らしですものね!

じゃあ、舞踏会の日にマルメロの家まで迎えに行くわね。

サイネリア』


サイネリアからの手紙を読み、マルメロは更に楽しみになります。

「確実に夢に近づいている!」

マルメロは確信し、誇らしげに笑いました。
昔の自分を思い出し、ここまで自分の力だけでのし上がってきた事に自信をもったのです。

鏡に映るマルメロは、美しく凛々しい立派な女性です。
ゴワゴワの髪も美しく結い上げられ、唇はいつも赤く艶めいています。

今の自分より、更に上にいけると思うと自然と笑いが込み上げてきます。

「気を引き締めて行かないとね」

マルメロは自分に言い聞かせました。
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