ペテン死のオーケストラ
会場に着いたマルメロは驚きます。

以前、アザレアの家で行われた舞踏会とは桁違いだったからです。

まずは、会場の広さに驚きました。
数えきれないほどのテーブルに椅子。
奥の方は見えません。

それから、豪華なシャンデリアが三つもあります。

真っ赤な絨毯に、大きな窓…。

とにかく、全てが大きく華やかなのです。

「すごい…」

マルメロは感動のあまり声が出てしまいました。
サイネリアは、そんなマルメロを見て笑います。

「マルメロって、可愛らしいわ」

その言葉にマルメロは少し腹が立ちました。
自分を馬鹿にされてると感じたからです。
サイネリアは、いつも通りで特に感動している様子もありません。
悔しいですが、格の違いを見せつけられたような気分です。

「可愛らしいだなんて、子供に使う言葉よ」

マルメロは少しだけ怒った素振りを見せました。
しかし、サイネリアは気にせずに答えます。

「褒め言葉よ。マルメロは赤ちゃんみたいに、可愛らしい頬をしてるもの。いつまでも若々しい証拠よ」

サイネリアは全く悪気はありませんが、マルメロにとって頬はコンプレックスでした。

「まんまるマルメロ」

幼い頃から、ずっと馬鹿にされてきた言葉だったからです。
マルメロは、気分が悪くなりました。

「少し、外の空気をすってくる」

マルメロは、サイネリアの答えを待たずに外へと歩きだしました。

「サイネリアが、町で浮いていた理由が分かるわ!」

マルメロは、サイネリアに対して負の感情しかわいてきません。
とにかく、落ち着こうとテラスへと向かったのです。
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