ペテン死のオーケストラ
母親は相変わらず、毎日を辛そうに生きていました。

「生きてるのが辛い」

マルメロは少し大人になっていましたが、母親のこの言葉だけは大嫌いなままです。

母親はマルメロを見かけると愚痴をたくさん言います。

「何でこんな辛いのか」

「私は不幸すぎる」

「周りは幸せそうなのに」

マルメロは母親の愚痴を聞くのが辛いのですが、静かに聞いています。

母親はマルメロの顔色なんて気にもせずに話します。

「私は生まれた時から不幸だったの。貧乏な家に生まれて、周りには馬鹿にされてね。大きくなっても変わらなかったわ。何とか結婚できたのに、毎日、毎日、罵られたわ。そして、旦那は愛人を作って消えたのよ。私とマルメロを残して。お金を残していってほしかった…」

マルメロは、傷つきました。
母親はまるで、マルメロがいらなかったかのように話すからです。

マルメロは話しました。

「私はお母さんと一緒だから幸せだよ。お母さんも私と一緒なら幸せだよ」

マルメロは必死に自分の存在価値を母親に伝えました。

しかし、母親は切り捨てます。

「マルメロは幸せで良かったね。私だけが不幸だ」

マルメロは母親に捨てられるかもしれないと思いました。
とても、冷たい声色だったからです。

マルメロは、こんな母親でも好きでした。
一緒にいてほしくて、元気になってほしくて、必死に言いました。

「お母さんも幸せになるよ!」

母親は泣き出してしまいました。

マルメロは何故、母親が泣いているのか分かりません。
ただ、胸が痛むだけです。

「私が、お母さんを泣かした」

マルメロは、反省を繰り返す毎日でした。
< 7 / 205 >

この作品をシェア

pagetop