ペテン死のオーケストラ

チャンス

サイネリアと別れ、家に戻ってからもマルメロは考えていました。

「王に近づくには、どうすれば良い?」

「このチャンス…、逃したら次はないわ」

「でも、こちらからは何もできない」

マルメロは、もどかしさを感じます。
思いついたら即座に実行に移したいマルメロにとって、何もできないという状況は耐えられない苦痛を感じさせます。

「あの時、サイネリアが余計な事を言わなければ上手くいったのに!」

マルメロは、苛立ちをサイネリアに向けました。

「そうよ。よく考えたらサイネリアが居なければ上手くいっていたのよ。本当、何事においてもサイネリアは邪魔ね」

サイネリアのおかげで、舞踏会に行けた事なんてマルメロは、すっかり忘れています。

「サイネリアは要注意人物よ」

マルメロは「ふん!」と言うと、自室へ戻っていきました。

ハンノキから、根掘り葉掘り聞かれましたが「何もございません」と、マルメロは答え面倒くさそうな態度をとります。

ハンノキも最初は色々と聞いてきましたが、マルメロの反応をみて安心したのか大笑いを最後に舞踏会の話しをしなくなりました。

「ハンノキは、本当に変わっているわ」

マルメロは、そんなハンノキを哀れみの目で見ました。

翌日からは、何も変わりのない毎日が始まります。

マルメロの母親は「まったく。マルメロは下手だわ。私なら王の一人や二人余裕よ」と、マルメロをからかってきます。

マルメロは母親の言葉に、反応もせずに無視をしました。

「今に見てなさい。運は私に味方してくれてるのよ」

マルメロは、母親に反抗せずに自分を落ち着かせます。
まだ、終わった訳ではないため僅かですが希望を抱いていたのです。

「王から何かしらの接触があるはず」

マルメロは、自分に言い聞かせながら毎日を過ごしていました。

そんなある日、一通の手紙が届きます。
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