ペテン死のオーケストラ
その手紙はサイネリアからの物でした。


『大親友のマルメロへ

マルメロ助けて…。

マルメロに会いに行きたいのだけど子供がいるから家を離れられないの。

お願い、いつでも良いから会いにきて。

マルメロに聞いてほしいの。

サイネリア』


マルメロは、手紙を読んだ瞬間に嫌な予感がしました。

「まさか…」

マルメロは、サイネリアの手紙を握りしめ苛立ち始めます。

「とにかく、会いに行くべきね」

すぐに、馬車に飛び乗りサイネリアの家まで走りました。


「マルメロ!来てくれたのね!」

サイネリアの家に着くと、目を腫らしたサイネリアがマルメロに駆け寄ってきました。

「ありがとう。まさか、こんなすぐに来てくれるなんて。マルメロが親友で良かった」

「当たり前でしょ。そんな事より、どうしたのよ?目が真っ赤よ?」

「最低な出来事が起こったの。お庭に行きましょう」

サイネリアはマルメロの手を引いて、庭に出ました。
庭の椅子に腰掛けると同時にサイネリアは泣き出したのです。

マルメロは真剣な顔で聞きます。

「サイネリア、だいたいの予想はついているんだけど…。ハッキリと聞かせてちょうだい」

マルメロはサイネリアの背中を撫でてあげました。
涙で真っ赤に腫れた目のサイネリアは、弱々しい声で答えます。

「予想…通りよ。王からの求愛を受けたの」

マルメロのサイネリアの背中を撫でていた手が止まります。
予想通り、最悪な結果だったからです。

「何で、何でサイネリアばかり!」

マルメロの手は悔しさで震えだしました。
サイネリアは泣いているばかりです。

「いつもサイネリアに先を越されるのよ!こいつさえ、居なければ!!」

マルメロの手に力が入ります。
サイネリアへ殺意に似た感情を抱いたのです。

「憎たらしいサイネリア!」

マルメロが、サイネリアを強く睨みつけ口を開こうとした瞬間。

「ママ」

子供の声がしました。
マルメロが声の主を見ると、危なっかしくフラフラと立っているクンシランが目に入りました。
一生懸命に、こちらに向かって来ようとしているクンシランを見てマルメロは力がぬけてしまいました。
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