ペテン死のオーケストラ
サイネリアは目を輝かせて聞きます。

「何?良い案を教えて!」

マルメロは、サイネリアの目を見つめハッキリと言いました。

「私も一緒に行ってあげる」

サイネリアは固まります。

マルメロは続けます。

「断れないのなら、行くしかないでしょ。なら、条件も出せるはずよ。10人も妾がいる男が1人や2人増えたところで何も変わらないでしょ。私もサイネリアと一緒に行ってあげるわ」

サイネリアは驚きすぎて声が出ません。

しかし、マルメロは気にせずに言います。

「ずっと一緒、約束したでしょ」

サイネリアはハッとします。
そして、困った表情になりました。

「でも、マルメロにそんな無理はさせられないわ。ご主人だって大反対よ?無理よ、そんな事…」

「いえ、無理じゃないわ。私が決めたのよ。もう、行くって決めた。サイネリア、王に伝えてちょうだい」

「そんな…。私は行きたくないのよ?」

「なら、断れるの?」

「それは…。無理よ」

「なら、答えは出てるじゃない。一緒に行きましょう」

「そんな…、クンシランが…」

クンシランは純粋な瞳でサイネリアを見ています。
サイネリアは、また涙が溢れてきました。
しかし、マルメロは冷たく言います。

「クンシランなら、ご主人と家政婦に任せなさい。覚悟を決めるのよ」

サイネリアは声を殺して涙を流しています。

マルメロはサイネリアの背中に手を伸ばして言いました。

「大丈夫。ずっと一緒よ。私がいるわ」

サイネリアはマルメロを見つめます。

マルメロは少し微笑みました。

「どうせ行かないといけないのなら、楽しむのよ。それぐらいの強さが必要だわ。サイネリアの気持ちも分かるけど、行くしかないのよ」

サイネリアは見つめたままです。
マルメロも見つめ返して言います。

「私達で、王をビビらしてやりましょうよ!とんでもない女を呼んでしまったってね。そしたら、返してくれるわよ」

マルメロは笑いながら明るく話します。
サイネリアも徐々に希望がわいてきた様子。

「そうね。私達が一緒なら恐いモノはないはず。でも、マルメロにそんな重荷を背負わしたくない」

「馬鹿ね。サイネリアが泣いているのに無視なんかできないわよ。気にしないでちょうだい、私は強い女だからね」

「ありがとう。でも、ご主人は…?」

「どうにでもなるわよ。とにかく、私の事は気にしないで」

サイネリアは悩んでいます。
マルメロは、立ち上がりました。

「じゃ、私は帰るわね。王にちゃんと伝えておいてよ。私は主人と話しをつけておくから!」

サイネリアが「でも…」と口を開くと、マルメロが「二人で楽しみましょう」と言いサイネリアの言葉を待たずに帰っていきました。
< 74 / 205 >

この作品をシェア

pagetop