ペテン死のオーケストラ
「王の元へ行く」
案の定、ハンノキは大反対をします。
「マルメロよ、それだけは駄目だ!!」
「ですが、お誘いは断れませんの。どうか、お許し下さい」
「駄目だ!ワシが言ってやる!王だろうが何だろうが関係ない!ワシの嫁に勝手に求愛など有り得ん!!」
「そんな事をしても無駄だと分かっているでしょう?別に離婚する訳ではないのですよ」
「離婚したようなモノだ!ワシの可愛らしいマルメロを王などに渡してたまるか!」
「落ち着いてください。王の元へはサイネリアと一緒に行くのです。ですから、ご安心ください」
「何を安心するんだ!?サイネリアと一緒だから安心だと!?関係ないだろ!」
「関係あります。サイネリアは私の大親友ですよ。彼女を一人で行かせる訳には行きません。裏切りになります」
「ワシはどうなる!?ワシへの裏切りだぞ!」
いくら、話し合っても決着がつきません。
終いには「王を殺してやる」とまで言い出したのです。
マルメロは疲れ切っていましたが、諦めずに説得を続けます。
「ハンノキ様は、私を愛していらっしゃるのですか?」
「当然だ。愛しているからこそ止めているのだ」
「愛しているのなら、認め行かせて下さい」
「何度も言わせるな。王の元に行って幸せになった奴はいないんだぞ。マルメロが不幸になるのを黙って見ていろと言うのか?」
「私は他の人とは違います。ハンノキ様が1番分かって下さっていると思っていたのに…」
「わかっている!だが、この話しは別だ。マルメロよ、冷静になるんだ。少し、遊びが過ぎるぞ」
「遊びなんかじゃありません!」
「ワシには、マルメロの可愛らしい遊びにしか見えない。覚悟も何もなくフラフラと流されている」
この言葉にマルメロは怒ります。
「私は、そんな簡単な女ではございません!失礼ですわ!!もう、決めました!ハンノキ様、別れて下さい!」
ハンノキは驚きます。
「馬鹿者!別れなど簡単に口にするな。ワシは別れんぞ!」
「なら、選んで下さい。私と別れるか?それとも、私を王の元へ行かせるか?」
「どちらも同じ選択ではないか…。マルメロよ、母上も悲しむぞ?」
マルメロは目が輝きました。
「では、お母様も呼びましょう」
マルメロは立ち上がり、母親を呼びに行きました。