ペテン死のオーケストラ
「やったじゃない!マルメロ!!」
母親の歓喜の声です。
ハンノキは予想外、マルメロは予想通り。
母親は満面の笑みで話します。
「マルメロは王族に行くと信じていたわ!貴女みたいな気の強い女は王族がぴったりよ!」
「お母様、ありがとうございます。ただ、ハンノキ様が反対しているのです…」
「はぁ!?何で!ちょっとハンノキ!あんたね、男ならドンっと送り出してやりなさいよ」
「母上…!ワシはマルメロを想って反対しているのだ。王の元に行って幸せになった奴を見たことがない!行かせるべきじゃないのだ!」
「うるさい!マルメロが行くって言ってるんだから行かせてあげな。別に離婚する訳じゃないんだから」
母親はマルメロと同じような事を言います。
ハンノキは口ごもり居心地が悪そうです。
2対1では、さすがのハンノキも厳しくなってきました。
「ハンノキ、ほら頷いてやりなさい。マルメロは、王族に行きたいのよ。そうでしょ、マルメロ?」
「はい、お母様。私は覚悟を決めました。後は、ハンノキ様のお許しだけです」
「ほら、ハンノキ。マルメロだって行きたがってる。何をウジウジ言ってるのよ?マルメロが王族に行けば私達も王族の一員みたいなもんよ。こんな素晴らしい話しを断るなんて馬鹿げてる」
「そうですわ!私が王族に行けば、この家の名前も一気に有名になります」
ハンノキは頭を抱えています。
母親とマルメロは同時に言いました。
「良いでしょ!?」
ハンノキは、ため息をつきました。
そして、ゆっくりと立ち上がり言いました。
「わかった。好きにしろ」
そう言い部屋から出て行ってしまいました。
マルメロは込み上げてくる笑いを必死で抑えます。
母親は大笑いしています。
「マルメロ、よかったわね。あんた、私のおかげで許しが出たんだからお礼はしてよね」
母親は厭らしい笑みを浮かべ言ってきました。
「分かっているわ」
マルメロは澄ました表情で答えます。
二人は目を合わせ笑い合いました。