ペテン死のオーケストラ
プチ・ガーデンのマルメロお気に入りの石の椅子に座り手紙を読んでいます。

『大親友のマルメロへ

マルメロ、大丈夫?

私はマルメロのおかげで随分と気持ちが楽になったわ。

主人も最初は涙を流していたけど「マルメロさんがいるなら安心」って言ってるわ。

クンシランは、まだ幼いから逆に良かったのかも。

寂しいのに変わりはないのよ。
でも、クンシランは私を忘れた方が良いのよ。

王はマルメロを大歓迎するですって。

とても喜んでいたわよ。

二人で頑張りましょうね

サイネリア』


サイネリアからの手紙を読みながらマルメロは笑いが込み上げてきました。

「ついに、この時が来た」

マルメロは腹の底から込み上げてくる笑いを感じています。

「この感じよ…。この笑いが堪らなく好きなの」

マルメロの思い通りに話しが進んでいく事が可笑しくて堪らないのです。

ハンノキを踏み台とし、更に上に行く。

幼かったマルメロが誓った事が、着々と進んでいきます。

「プチ・ガーデンとは、お別れね」

マルメロは、大好きなプチ・ガーデンを見渡し小さく呟きました。

「この森があったから、ここまで来れたのよ。辛い事や悲しい事を、この森は癒してくれたの」

プチ・ガーデンは紅葉が美しく、全体で秋を演出しています。

「また、いつか来られたら良いな…」

泉がコポッと、返事をしたように音がなりました。

「この森は生きているわ」

マルメロは自然な笑みを浮かべます。

そして、立ち上がり思いっきり息を吸い込みました。

冷たい空気が体に入り、清められていくように感じます。

「さぁ、行きましょう」


マルメロは、瞳を鋭く光らせます。

これから始まる王をめぐっての戦いに胸を弾ませて。

マルメロはプチ・ガーデンに言いました。

「必ず勝利をおさめて帰ってくるわ」

プチ・ガーデンに強い風がふき、葉や草が揺れ音が鳴り響きます。

プチ・ガーデン全体でマルメロへ返事をしたのです。

マルメロは、真っすぐ前を向き歩きます。

自分の価値を確かめる戦いへ。


【第2章,完】
< 78 / 205 >

この作品をシェア

pagetop