ペテン死のオーケストラ
サイネリアはマルメロのように、王には媚びていませんでした。

寧ろ、嫌っていたのです。

そんなサイネリアを見て、マルメロは苛立ちを感じます。

「いつも、いつも!どうしてサイネリアが私よりも優遇されるのよ」

サイネリアは悪口も言われていません。
マルメロは悪口を気にはしてませんが、サイネリアに悪口がない事は許せなかったのです。

「同じ立場なのに、何故サイネリアは優遇されるの?私の方が頑張っているのに」

マルメロは、いつまで経ってもサイネリアにだけは勝てずにいました。

しかし、負けず嫌いのマルメロはあの手この手で王の気を引きます。
サイネリアよりも、自分の方が優れていると証明するために。

「王はサイネリアと私なら、どちらを選びますか?」

マルメロは王に問い掛けます。

「どちらなんて選べない」

王は答えます。

マルメロは悔しく思うのです。
他の妾なら「マルメロを選ぶ」と王はハッキリ答えます。
しかし、サイネリアに関してだけは答えを濁らすのです。
それはつまりマルメロとサイネリアは同じ、もしくは、サイネリアが上という意味を表しています。

マルメロにとって、サイネリアだけが厄介な存在になっていきました。

しかし、サイネリアはマルメロの事を大切な友人だと思っていました。

マルメロの悪口が聞こえたら悪口を止めるよう咎め、マルメロが苛立っていたら話しを聞いてあげる。

サイネリアにとってマルメロは、大切な大切な友人なのです。

そのような態度のサイネリアが、更にマルメロを逆なでします。

微妙な関係を保ちながら、マルメロとサイネリアは毎日を過ごしていました。
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