ペテン死のオーケストラ

友人

クンシランの死は大変な影響を及ぼしました。

サイネリアが発狂したのです。

まるで別人のようになったサイネリアを皆は恐れました。

大きな声で叫び、怒鳴り、暴れる。

そんなサイネリアを皆は「悪魔につかれた」と恐れました。

王も心苦しい様子で、サイネリアを見守ります。

しかし、マルメロは違いました。
今までと変わらずサイネリアと接するのです。

サイネリアがマルメロに訴えます。

「もう、死にたい!お願い、私を殺して!!」

「サイネリア、馬鹿な事を言うのは止めなさい。死んだところで何も変わらないわ」

「いいえ。私の悲しみが消える!マルメロ、お願いよ。私を殺して…」

「嫌よ。サイネリア、貴女って自分の事ばかりね。自分が楽になるために人の手を汚させるつもり?」

「わかった…。自分で死ぬわ」

「だから、死んでも意味ないわよ。まったく、人の話しを聞かないのね。その怒りや悲しみを上手く使いなさいよ」

「上手く…、使う?」

マルメロは片方の口角をあげるお得意の笑顔で言いました。

「例えば…、王を殺すとか」

サイネリアの目が大きく開きます。
マルメロは話し続けます。

「だって、サイネリアの憎むべき相手は王でしょ。許しをくれたらクンシランに会えたのよ?サイネリアは自分を憎んでいるみたいだけど。私から言わせれば、それは大きな間違いよ」

「…そんな、私が王を?」

「復讐よ。サイネリアどう?」

サイネリアの目はキョトキョトと落ち着かなくなります。
そんなサイネリアを見てマルメロは笑いました。

「サイネリア、冗談よ!ね?一瞬でもクンシランの事を忘れられたでしょ?」

サイネリアは驚いた表情でマルメロを見つめました。
マルメロは真剣な表情でサイネリアに言います。

「クンシランは死んだのよ。でも、サイネリアは生きなければ駄目。強くなりなさい」

「マルメロ…、貴女は何故そんなに強いの?」

「私は産まれた時から強かったわ。誰にも負けないくらいに」

「マルメロが側にいてくれたら、大丈夫な気持ちになれる。マルメロ、側にいて…」

マルメロは込み上げてくる笑いを抑え言います。

「もちろんよ。私の側にいなさい」

マルメロは、「勝ち」を確信しました。
サイネリアを自分の言いなりにできる立場を得たからです。

「これで、恐い者なしよ」

マルメロは、久々に感じる大好きな笑いを噛み締めました。
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