ペテン死のオーケストラ
マルメロはストケシアがお気に入りになりました。
興味津々でストケシアに質問をします。

「ねぇ、ストケシアっていつも城にいるの?全く見かけないんだけど。いつもは何処にいるの?」

「俺は庶民ですからね。ずっと城には居ないですよ。城下町に家があるので、そこに居ます。ただ、城への出入りは自由なのです」

「何それ!ずるいわよ!私なんか、城から出ちゃ駄目なのに。ストケシアは、ずるいわ」

「そんな責めないで下さいよ。だって、俺は画家ですよ。画材とか買わないといけないし、勉強だって…」

「うるさいわね。とにかく謝りなさいよ。そしたら、許してあげる」

「そうですか?じゃ、すみません」

「仕方ないわね。許してあげるわ」

「はい…。マルメロ様って面白い人ですね」

「え?」

「他の貴族とは違います。とても面白くて、しかも優しくて、しかも正直者です」

マルメロは言葉を失います。
胸が締め付けられ、苦しく辛い気持ちになってきました。

「やめてちょうだい。私はストケシアに分かるような女じゃないわ」

マルメロは、話しを止めさっさと歩き出しました。

「また、描かせてくださいね」

ストケシアはマルメロの背中に声をかけます。

マルメロは返事をせずに、足早に自室へと戻りました。


自室に戻ったマルメロは、辛くて寂しい気持ちに襲われます。

「駄目、駄目!気持ちを強く持ちなさい。私は、私だけのために生きるのよ」

マルメロは大きく息を吐きだし「落ち着け」と、自分に言い聞かせます。

「ストケシアを信じるだなんて…。私ったら、まだ懲りてないのね」

マルメロは、自分の弱さを認識し嘲笑います。

「自分だけを信じろ」

幼いマルメロが誓った言葉を思い出し、気を引きしめました。
< 91 / 205 >

この作品をシェア

pagetop