Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
ジルはどう答えていいのか分からなかった。
胸が痛い。
ローグも唇を真一文字に結んで難しい表情を浮かべていた。
「ま、そんな訳で、俺のつまらねぇ昔話はこれでお終いだ」
そう言いながらロイは目前にある藪を掻き分けて道を開いた。
話している間、一度も二人を振り返って見ることはなかった。
「あ、あの。ごめんなさい」
ジルはやっとのことでその言葉だけを言った。
まさかそんな過去があったなんて。
話をさせて嫌なことを思い出させてしまった。
しょうもないなんて言ってしまった自分を恨めしく思った。
「何で謝る?
俺はあんたたちに礼を言いたいくらいなんだぜ」
え?
どういうことだろうか。
ジルはローグと顔を見合わせた。
ローグも分からないというジェスチャーをジルに送った。
「最近になって、ポツポツと事件のことを耳にするようになった。
俺は直感したよ。弟のニックの仕業だってな。
あいつは一族の盗賊団を、チンピラのやることみたいに…。
あいつは下衆な賊に成り下がりやがった。
それは俺には許せねぇ」
ロイは藪に切り裂く動作をやめていた。
後ろから見ても彼の背中はなんだか嘆いているように見える。