Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
「妹の死は俺に責任がある。
けれども、今あいつがやってる事の正当化にはならねぇ。それに関しては一言も二言も有り余るくらいだ。
あんたたちが来なかったら、俺は今行動していねぇよ」

そう言うとまたロイは道を切り開く作業に戻った。

何かがロイの中で変わりつつある。
いや、抑えていたものを吐き出そうとしているだけかもしれない。

ジルはそう感じた。

そして、ますますロイたちの事を放っておくことが出来なくなった。

ローグは黙って前にいるロイのところへ進むと、ロングソードを抜いて作業に手を貸した。


その時だった。

大地を揺るがすかのような獣の咆哮が辺りに響き渡った。

鳥たちが怯え、一斉にバサバサと飛び立っていく。

一瞬にして緊張が走る。

咆哮は近いところから発せられ、ジルは辺りを見回した。


先ほどまで何事もなかった森の空気が、ピンと張り詰め、漂う。

茂みや木々が少しでも揺れると意識を移し、神経を尖らせた。

何かが近くにいる。
それは疑いようがない。

何か獣の唸り声のようなもの微かだが聞こえる。

< 109 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop