Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
「ちっ」ロイが舌打ちをした。

「何だ」

「だから言ったろ。やばい道のりだって。
魔物の巣の近くをつついたらしい。
とりあえずここは戻るぞ」

ロイはそう言うと、額に浮き出た汗を拭い、姿勢を屈めた。

ジルたちもそれに習い、来た道を引き返す。


行く手に背を向けて踏み出そうとした瞬間、ジルの視界がふっと暗くなった。

陽の光が遮られている。

上空に何かいる。

「危ない!」

判断するが早いか、ジルはロイとローグを突き飛ばし、自らも横に転がった。

倒れ込んだ頭上を何かが掠めていく。

顔を上げると、勢いよく飛びかかってきたそれは、方向を転換してジルたちに向き直ったところだった。

思わず息を呑む。


体長は3mくらいだろうか、ライオンのような獣が四つん這いになって、喉を鳴らし威嚇する。

頭部をフサフサの鬣で縁取り、ギラギラとした赤い眼でこちらを覗っていた。

口元から飛び出た異様に長い牙と、四本の脚についている鋭い爪。

二本ある尻尾を揺らしながら、眼前の獲物を品定めしているようだ。

一目見て凶暴なモンスターだと分かる。

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