Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
ジルは素早く腰のダガーを抜いて立ち上がった。

ローグも既にロングソードを構えている。

藪の中に転がったせいで、身体のあちこちがピリピリと痛むが、今は気になどしていられない。

それより、折れた小枝や藪ばかりで悪い足場にひそかに舌打ちした。


ロイもジルの後方で姿勢を整えていた。

ピュッピュッと空気を切り裂く高い音を鳴らし、小型のナイフを手に取る。

しかし、そんな武器では到底太刀打ちできる相手ではないだろう。


じりじりと睨み合いが続いていたが、先に獣の方が動いた。

大きな体をバネにして、ジルに飛びかかり、片足を振り被った。

ジルはその攻撃を後方に跳躍して避ける。

目の前に小枝や藪の欠片が舞い上がった。


踏み込みのよさそうなところを選び、着地した獣に向かって地を蹴る。

ジルは獣の側面から間合いを詰めると、体重をかけて肘鉄を喰らわせた。

どっかりと倒れこむモンスター。

だが、すぐに体勢を整えるとジルに向かって大きな牙を剥き、喰らいかかった。

すかさずそこへローグがソードを振るう。

ガキっとソードと牙のぶつかり合う耳障りな音が響いた。

頭がすっぽりと入りそうな大きな口を広げ、獣がローグを襲う。

ローグもそれに対し、ロングソードを起用に操りながら躱す。

そして突く。

一進一退の攻防。

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