Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
「あんたって…」

ジルが俯いて黙ってしまったのを見て、ロイは呆れた口調で呟いた。

「あんたって、人の過去は穿り出すくせに、自分のことになると話そうとしないんだな」

その言葉がジルの胸を刺すように貫く。

その通りだった。

返す言葉がない。

ジルは更に顔を伏せた。


「ま。俺には関係ないけどな」

ロイはジルのこのに関してさほど興味がないのか、それとも無理に聞き出すことをさけたのか、軽くジルの頭を叩いて、

「ま、人間いろいろあるな。さ、もう寝ろよ」と休むように促した。


なんだかロイに対して申し訳ない気持ちになったが、ジルは大きく息を吐いて頷いた。

自分でもよく分からない感情なのだ。
人に話して何が分かるというのだろう。

いや、他人に話すことすら恥ずかしい。


そして、先ほどの場所に戻り身体を横たえた。

見るとローグの背中が目に入る。

何だか気まずい気がして反対側に体勢を変えた。

あまり眠れそうにないが、我慢して目を閉じることにした。


ローグのことはいずれ落ち着いたときに考えればいい。
今は自問自答しても同じことだろう。

そう自分に言い聞かせた。

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