Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
その時、ジャンは近づく人の気配を察知した。

目を閉じて短く息をつく。

慌てることはない。
こんな場所にいる自分に近づく人間は決まっている。

「なんだ?」

まだ姿を現さないその人物に向かってジャンは言った。

すると、ジャンの背後から声は聞こえた。

「やはりここにいたか。
すぐに対処することができた」

ジャンと同じような衣服に身を包んだ男が、後ろにあるラタメナの木の枝に立っている。

顔は布で覆っていた。
以前ジャンたちがジルの乗っていた馬車を襲った時のように。

つまり、盗賊団の一員だ。


彼は対処することができたと言った。

自分にもその対処を手伝うようにとの要請だろう。

ジャンはまだ吸い切っていないタバコの火を乱雑に消すと、その場から跳躍した。


木から木へと器用に飛び移りながら、動く人かけが二つ。

あれよあれよという間に影は移動し、そのスピードを上げていく。

ジャンは要請に従い、その男について行った。


しばらく移動した後、とある木の上で彼は止まった。

ジャンも隣につく。

その辺りには先に移動してきたであろう数人の仲間が待機していた。

仲間たちはある方向を注視して、気を張り巡らせている。

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