Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
その時である。

レンズを通して見える一人の動きが止まった。

その頭がゆっくりと振り返る。

その人物を確認したとき、ジャンは絶句した。

なぜだ、何を考えている。

呼吸が少し上がる。

レンズの向こうの人物、ロイはずっとこちらを凝視しているように見える。

まさか、俺たちがここにいるのが分かっているのか?

ジャンは背筋に寒気が走るのを感じた。
その後、じんわりと汗ばんでくる。


「ジャン、行くぞ」

仲間はジャンの焦りに気づく様子もなくそう言った。

「あぁ」ジャンは騎乗に振る舞いながらレンズを外し、静かに言った。

「確保だ」

仲間たちが一斉にその場から離れ、標的に向かって駆けていく。

その幾数もの背中を眺め、ジャンは一人歯軋りをした。

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