Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
穏やかな傾斜のある坂をジルたち三人は登っていた。
この辺りは細長い木に加えて雑草が多い。
油断をすると滑って転がり落ちてしまいそうだ。
アジトへはもう目と鼻の先だとロイが言った。
もしかしたら場所を移しているかもしれないと危惧したが、ジルは黙っていた。
今はロイを信用するしかない。
そのロイがふと足を止めた。
何かを感じたように辺りを見回す。
どうしたというのだろう。
道に迷ったのか。
そう発しようとした時、ロイはある一点に集中し続けた。
彼の表情が硬くなる。
「どうした?」
ローグが尋ねた。
「見つかった」
「なんだって」
ローグとジルは警戒して辺りの様子を覗った。
特に変わった気配は感じないのだが。
いや、先ほどロイが見つめていた方角、そこにある木々たちが微妙に揺れている。
ほんの微かな変化だが、風によるものではない。
揺れは徐々にこちらに近づいてきている。
「どうするの?」
ジルが腰のダガーに手を伸ばすと、ロイが制した。
「いや。迎え撃つのは賢明じゃない。
それより、せっかく迎えに来てくれるんだ。あいつらに案内してもらおう」
本当に大丈夫だろうか。
奴らがそう簡単に承諾するものだろうか。
しかし、ロイにはロイの考えがあるのだろう。