Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
だが今は、盗賊団の一員として仕事を放棄することはできない。

「だが、いくら兄貴でも、ここから先へ通すわけには…」

「いかないとでも言うつもりか?」

ジャンが話し終える前にロイが口を挟む。
そして続けた。

「じゃあ、どうする? ここで俺たちを倒すか?
言っておくが、俺たちはお前には用はない。
俺は刺し違えてでも、あいつらをニックのところへやるぜ。
あの二人はここまでに至った理由を話すだろう。
そうすれば、娘を逃がしたお前の行動はニックにバレるんじゃねぇか?」

ロイはなるべくトーンを押さえつつ、ゆっくりとした口調で話した。

自分の言葉がジャンの脳に染み渡るように理解させるのが狙いだ。

ちょっとした賭けだった。

自分の戦闘技術では、ジャンには敵わない。

以前は互角ほどの腕を持っていたが、三年のブランクは大きい。
それに加えて他の者の相手をすることなど不可能だろう。

刺し違えてでも、などという言葉ははったりにしか過ぎない。

ジャンに我々を案内させるために、自発的に行動へ移らせる。

できるだけ無傷でニックのところへ行くことができれば上等だ。

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