Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
しばらく沈黙が続いた。

その間、数秒か数分か。
ジルには長く感じた。

いつの間にか傍に来たローグの気配を感じる。

そのローグの存在がジルには精神的支えになっていたのかもしれない。

それほどこの兄弟の発するオーラは苦しいものに感じられた。


「兄さん…」

長い沈黙の後、ニックは口を開いた。

「僕の負けだよ…。殺してくれ」

あまりの発言にジルは衝撃を覚えた。

それはジルだけではなかった。

ロイもローグも、そしてジャンもニックの発言に思わず息を呑んだ瞬間だった。

そして、ジャンだけがニックの意図を察してか痛々しげに目を背けた。

「…僕に、兄さんは殺せない…。
どんなに憎んでいても、殺せないんだ。
それが分かったよ。だから…」

「なんだよ、おい!
だから、殺せってのか!」

ロイがニックの言葉を遮り、胸倉を掴みにかかった。
顔を真っ赤にして怒鳴る。

「何言ってんだよ、お前っ!
俺はお前を殺したくて来たんじゃねぇ。なに勝手なことばかり言ってんだ!」

「兄貴っ」

掴んだ手に力が込もり、ジャンがそれを制した。

手を離すと、ニックは苦しそうにむせかえる。

咳が治まると、ニックは諦めたような表情を浮かべ、ロイから視線を外した。

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