Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
ロイの怒りは治まるどころか、隣にいたジャンに矛先が向いた。

「ジャン、いったい何なんだよ。
誰かれ構わず襲って、盗み働いて。それで俺が来たら殺そうとまでしておいて、今度は突然殺してくれだ?
意味が分からねぇよ。
お前らいったい何やってんだ!!」

ジャンに向かって激しく怒号する。

ジャンからは少し前まで見せていた殺気が消えていた。

それどころか、もう戦意は失っているようだ。
ニックの戦意喪失と合わせて同じように。

「兄貴、…ニックは…」

「やめろ。ジャン、言うんじゃない」

重々しい表情で口を開くジャンを、ニックが制した。

呼吸は荒く、額にも脂汗が浮いている。

どう見ても正常でないことはすぐに察することが出来た。

「おい、なんだよ…」

何か大事なことを隠されている気がして、ロイはなおも詰め寄った。


その時である。

あ、駄目よ。と微かな女性の声が部屋の入り口から聞こえたかと思うと、ロイの足元に駆け寄ってきた一人の子供がいた。

その男の子はニックとロイの間に立ちはだかり、小さな手をできる限り広げてニックを庇う姿勢をとったのだ。

何だ、この子は…。

ロイの中にちょっとした混乱が起こった。

それはジルもローグも同じだった。

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