Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
ケイトは言った。

ありきたりな人生に嫌気がさしていた、と。

身内や友達が心配していることは承知だ。

だが、今まで何の不自由もなく、ぬくぬくと暮らしてきた。

家に帰れば、口うるさい兄が毎日酒を飲みながら文句を垂れてくる。

職場ではストレスが積み重なるばかり。

それでも毎日、食事や寝床には困ることはない。

毎日同じことの繰り返しで、例え結婚したとしてもただ平凡なだけだろうと。

そんな自分に少なからず疑問を抱いていたらしい。

それが、今回の事件で何かが変わったと彼女は思った。

大人に捨てられた子供たちの事実を目の当たりにしたその時、この盗賊団の行動が何か正しいことのようにも思えた。

平凡な毎日から抜け出したいという願望と、少しの好奇心と正義感が彼女を盗賊のアジトへ留めた理由なのだろう。


ジルが、ザックがとても心配していることを伝えると、彼女は少し意外そうな顔をしていたが、その後でうっすらと涙を浮かべていた。

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