Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

馬車の屋根に上ったジルを目掛け、男が攻撃を仕掛けてくる。

身体を捻りながら湾曲刀をギリギリのところで躱す。
躱す。
躱す。

ジルが動き回る毎に、木製でできた馬車はギシギシと軋んだ音を上げた。


ジルは隙をみて勢いよく屋根を蹴ると、跳躍して男を飛び越え、地面に着地した。

そのまま流れるような動きで後方にいた男に狙いを定め、水面蹴りを放つ。

同時に腰のダガーを素早く抜くのも忘れない。
逆手に握る。

ジルの脚が男を捉え、引っ掛けて地面に倒した。

首元を抑え込む。

だが、ジルはすかさず側面から放たれた殺気を察知した。

ビュンッ。

本能のまま、身体を反らせて避ける。

湾曲刀がジルと男の距離を遠ざけた。


ジルと倒れた男の間に入ってきたのは、最初に襲ってきた男だ。

綺麗な弧を描きながら、湾曲刀が彼の手によって舞う。

その見事な牽制技は、彼が達人であることを意味していた。


ジルは滴り落ちる汗を拭いながら、相手の出方を待った。

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