Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

後方で起きた戦闘に、前方を固めていた男たちも気づいたようだ。

反撃を許すまいと御者たちを脅し、乱暴に馬車から引き摺り下ろす。

馬が驚き、怯え嘶く。

その勢いで馬車はまた揺れに襲われた。


「ジルっ!
大丈夫か?!」

揺れる馬車からダレンが身を乗り出す。

その声にジルは一瞬気を取られた。

見ると、ダレンに襲いかかる男の姿があるではないか。

咄嗟にダレンの方向に駆け寄ろうとしたが、ジルは男の湾曲刀に阻まれてしまった。

滑らかに攻撃を繰り出す湾曲刀は、ジルを足止めするのに充分だった。

ガキッ!
カキンッ!

受け太刀するダガーとぶつかり合い、耳障りな金属音を発する。

だが、武器での攻防はリーチの短いジルには明らかに不利だ。

そう判断すると、ジルは地を蹴り相手の懐に飛び込んだ。

体勢を低く、右半身から突っ込む。

突然の突進に少し怯んだ男は、難なくジルの侵入を許してくれた。

大振りになった相手の腕を弾き、身を翻して肘打ち。

体勢を崩したところで腕を抑えると同時に、右手に持ったダガーの柄を男の顎に命中させた。

「…ぐっ……」

男がよろける。

だが、男は一筋縄では倒れない。

体勢を崩しながらも湾曲刀をジルに向かって薙ぎ払う。

ジルはその攻撃を、身体を翻しながら逸らして避ける。

そのまま回転の勢いを利用して、後ろ回し蹴りを放った。


下から跳ね上げられたように男の身体が宙に浮き、手からは湾曲刀が滑り落ちた。

< 25 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop